健康と資産を蝕む住宅暗黒時代

日本の住まいは消耗品?

極めて短い住宅寿命

「一生に三度建て替えなくては満足する家は持てない」。
こんな言葉を耳にしたことがある人も多いでしょう。実際日本の住いの寿命(建て替えまでの年数=住宅サイクル年数)は30年ほど。イギリスの141年、アメリカの103年と比べると、極端に短い数字です。

欧米では何世代にもわたって家が住み継がれ、その都度、住み手が外壁を塗り直したり、屋根を修理したりしています。対して日本では、古いものに価値はないとばかりにためらいなく解体し、すぐに建て替えてしまうのです。

多くの人にとって生涯をかけての買い物であるのに、20年も経つとほとんど無価値になってしまうようなものが、果たして「資産」と呼べるのでしょうか。解体に伴って大量の廃材が出ることを考えれば、住宅の寿命が短いことは、地球環境保護の面でも大きな問題と言えます。

なぜ日本ではこのように住宅の寿命が極端に短くなってしまったのでしょうか。

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    耐久性に決定的な問題

    法隆寺宮大工の棟梁として名高い西岡常一氏によれば、千四百年前に建てられた法隆寺は様々な性質を持つ木材がそれぞれの個性を最も発揮できる場所に使用されることで長寿命を実現しているそうです。

    木材は乾燥によって伐採後数百年で最も強い強度を発揮するため、日本の伝統的な住宅は本来、木材の耐久性とともに長寿命住宅であったのです。


    震災倒壊家屋阪神・淡路大震災では多くの住宅が倒壊。日本の住まいの弱さをさらけ出しました。 大切にすれば千年、二千年ももつ木材の寿命。それが現在の住宅に使われるとわずか20年から30年で絶えてしまうようになったのは、住宅が構造的な耐久性を失ったからです。

    温度18℃以上、湿度80%になると腐朽菌やダニ・カビが活発に活動し始めます。
    そのため、木材は高温多湿の環境下に置かれると腐朽菌の働きによって急速に腐朽していきます。
    腐朽菌はちょうど椎茸がその榾木(ほたき)を養分にして育つのと同様、木を養分として繁殖します。腐朽菌の繁殖=材木の強度低下となるのです。
    日本の気候は、夏場に雨が多く高温多湿な風土であるため、風通しを良くしないと木が腐るので、日本の家造りは古来より不快軒の出と高床式で風通し良くが習いとなっていました。

    結露で床下が腐敗したケース。湿気に弱い木材を長寿命化するには、十分な通風を確保することが前提です。 しかし、『風通しがよい』ことを狙った住宅は、風通しが良い反面、現代生活では常識となっている冷暖房がしにくく、いや冷暖房をすれば家の中に結露を起こし(その代表的な例は冬場の窓に対する結露)家を腐らせるのと同時に、カビやダニを繁殖させ中に住む人の健康に悪影響を与える様になってしまうのです。
    つまり、現在に至っても冷暖房が存在しなかった時代の住宅建築法に盲目的にすがっていたために、現在の住宅は、耐久性と住む人の健康という大きな問題を抱えるに至ったのです。


    壁内結露で腐敗したケース。 住まいとは単に雨露をしのぐ器ではありません。大切な家族を守るシェルターでもあるのです。 しかし、昔の日本の住宅には家の中と外界とを隔てるという概念が無いままでしたから、それを引き継いだ現代の住宅にも、それが外部なのか内部なのか不明な空間がいくつもあります。床下収納庫や小屋裏収納庫、押入などはその代表的な例と言って良いのです。

    現在のように冷暖房をするのが当たり前になった住宅には十分な断熱性、気密性、換気能力等を持つシェルターとしての住宅概念が必要になっています。 日本の住宅が性能面で今日の様な脆弱な住宅であっていいはずがないのです。

    住まいを本当の「資産」にするために

    このように、住いとしての基本性能が不十分であるのに、建築費だけが異常に高いのが日本の住宅なのです。多くの人々がその事実を知らないか、あるいは知っていても「しょうがない」とあきらめているわけです。

    結果として日本の住宅は、欧米に比べ価格は2倍、耐久年数は2分の1となってしまいました。30年ものローンを組んで借金を払い終わった時、その住宅はお払い箱となっているのが現実です。果たしてこのような状況が「生活大国」にふさわしいでしょうか。

    住いが消耗品であっていいはずがありません。十分な資産価値を持つ、本当の意味での社会のインフラであるべきです。そのためにも実際の住み手である生活者一人ひとりが、住いづくりについての正しい知識を持たなければなりません。

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